コラム

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 COLUMN 1. 去勢・避妊について

 vi. デメリットを覚悟する

紆余曲折の末、ラナに避妊の手術を受けさせる方向で本格的に動き始めました。しかしそこにはまだ明らかにしなければならないことがありました。それは、避妊手術によるメリット・デメリットの問題です。

いくら私なりの社会的責任を果たすために避妊を選択したとは言え、ラナの心と体に対するメリットよりもデメリットの方が大きすぎるのであれば、実行することは出来ません。(←それやっちゃったら虐待ですよね) 特にデメリットに関しては、犬の個体差によってもインパクトが違うと思われるため、よくよく検討しなければなりません。手術した後に「こんなハズじゃ無かった!」と騒いでももう遅いのですから。

私たちは、何件かの獣医さんに対して意見を聞いたり、本やネットで調べたりしました。ところが、メリットに関しては大体一致した見解が得られるのですが、デメリットに関する見解が1件1件異なるのです。

例えば、よく言われるデメリットと言えば避妊手術をすると太りやすくなるということでしょう。これについては、「ホルモンバランスの変化によって、太りやすい体質になってしまう」という意見と、「三大欲の一つが無くなるために、食欲が増進する。飼い主が調節すべきところを怠ったために太っただけ」という意見、さらには「去勢と肥満に医学的な因果関係無し」という意見がありました。

もう一つは避妊手術後に皮膚病になる子がいるということ。これも「ホルモンバランスが崩れるから、皮膚病になりやすい」という意見もあれば、「その可能性はあるが、特別避妊した子だけが皮膚病になりやすいわけではない」という意見もあります。

さらには、避妊手術をすると、年をとってから尿失禁になる可能性が高くなるということ。これも「手術をしたときの犬齢によるものが大きい」という意見や、「年齢ではなく、手術の時に卵巣・子宮すべてを摘出すると尿失禁になる。避妊するにしても子宮は残した方がいい」という意見がありました。

こうなると、いったい何が本当なのか、私レベルが見極めるのは非常に難しいです。恐らく、どれも確たる症例が揃っていないのだと思います。

一方、メリットとしては、子宮内膜症・子宮蓄膿症・乳腺腫瘍・乳がん等の発症率が下がることです。さらに、初ヒート前までに卵巣・子宮共に摘出した場合、前述の病気を99%防ぐことが出来ます。(←残りの1%は、摘出したはずの卵巣・子宮の一部が体内に残っていた場合に発症する可能性を考慮)

整理してみると、デメリットが『そうなる可能性がある』というレベルのものであるのに対して、メリットが『少なくとも4種類の病気をほぼ完璧に予防可能である』というのは大きな違いです。デメリットに関しては、私たちの心がけと、発症するかもしれないという覚悟、そして発症した場合の治療法を調べたりすることで、いざというときに備えようということになりました。

最後に残ったのは、手術そのものの危険性です。最近は動物への麻酔技術も発達しているため、そこまで心配する必要はないものの、ごく稀に、手術時の麻酔から目覚めなかったWANちゃんがいるそうです。また、手術の痛みがトラウマになったり、入院によって飼い主と引き離されたことを「捨てられた」と勘違いしてしまう子もいるとのこと。ラナの性格を考えると、入院で捨てられたと勘違いすることはないと思いましたが、麻酔と手術後の痛みによるトラウマだけは、私たちにはどうすることも出来ないことのように思えたため、手術をお願いする病院を数件あたりました。ウデの善し悪しまでは判断がつかなくても、先生の避妊/去勢に関する考え方、手術の内容などを聞くことで、少しでも私たちの心情を理解し、ペットのことを思って下さる先生に、ラナの手術をして欲しいと思ったからです。

幸いにも、信頼のおける先生に出会うことが出来た私たちは、「避妊手術をすると決めた以上、最大の効果が得られる初ヒート前の時期に手術しよう」ということで、生後ちょうど6ヶ月経った2002年6月14日、ラナの子宮・卵巣摘出手術をしました。


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